昔は、セラミック(ポーセレン)の修理は、あきらめることが多くありましたが、最近の接着材(接着システム)は非常に進化していて、3M社のスコッチボンド ユニバーサルアドヒーシブのMDPモノマーという成分により、エナメル質・象牙質・金属・ジルコニア・アルミナの接着成分が含まれ、シランカップリング材によりガラスセラミック・コンポジットレジンに、Vitrebondコポリマーにより象牙質に接着する成分が含まれるという、全部入りの何でもくっ付くという接着材が使えるようになっているのです。
昔は、種類によってプライマーを使い分け、使用していたのですが、今は、ひとつの接着剤で済みエラーが起きにくくなっているということと、実際の修理では、セラミックと金属と象牙質が混在しているようなケースが多くみられ修理しにくいことがありましたが、修理は行いやすくなっていると思います。
ただ、接着強度でいうと、修理したところと、技工士による一体化して焼成し製作した強度では、だいぶ強度は落ちてしまうということは仕方ないことかもしれませんが、以前より、修理したところが見てもわからないレベルまで治せることが多くはなっています。
これから先も接着システムはより進化していくことと思われるので、全部入りが出来たからこれで進化はおしまいという訳ではなく、この全部入りの使いやすさや強度、被膜の厚さや操作時間、湿度や水分への対応など進化するということにおいては、まだまだ進化しつづけることでしょう。
CDCとは米国疾病予防管理センターのことで、手指衛生ガイドラインが示されています。それは「手が目に見えて汚れているとき、タンパク質で汚染されているとき、血液やその他の体液で目に見えて汚れているときには、非抗菌石鹸と水、あるいは抗菌石鹸と水で手を洗うことを強く推奨」するということです。一般の方には分かりにくいタンパク質での汚染という部分が実は一番手間がかかる部分です。
歯科治療を行う際、お口の中に入れたグローブは汚染されているという原則に元ずかなければならないからです。治療を始めてから、不潔域内の部分以外の他のものを触ることができなくなります。
これは、治療の作業効率を著しく下げる要素となるため、なかなか守ることは困難です。しかし、そこらじゅうタンパクで汚染されたものだらけとなってしまうことは、不潔域だらけということにつながってしまいます。手洗いをした後、備え付けのタオルで手を拭くことも、逆に手指汚染を招くという考え方の上で行われるため、一般家庭で考えると、タオルで手を拭けないとか異常潔癖症でないと出来ないような要素が求められるのです。しかし、お口の中はそれだけ細菌が大量に存在するということを意味しています。普段の生活で口の中に指を入れるということはないでしょう。お口の中は400~500種類の細菌が生息しています。唾液が元々不潔なのではなく、唾液に細菌が浮遊するためにお口の中に入れたグローブは、不潔とみなすしかないのです。
唾液だけでなく、血液も介在することもよくある歯科治療なので、より潔癖が求められてきます。しかし20年ほど前は素手にタオルで手を拭き、出血する時だけグローブという時代でした。B型肝炎だけ特別扱いのような時代から20年。健康保険での保険点数はこのころから止まったまま。作業効率を落とさずに、同じだけの患者数を診るのは至難の業です。歯医者なり立ての人も、ベテランも大学教授も同じ料金の健康保険制度も安心・安全の時代に合わせて適切な進化して欲しいと思う今日この頃ですが、逆に審美歯科治療は、自由診療なため、これらの基準をみたせるだけの労力と時間を料金に組み込むことが可能なので、一般的な世界基準の歯科医療の提供が可能となります。日本で審美歯科やインプラント・矯正などの自由診療に異常にシフトしてしまうのは、よりよい歯科治療を行いたいと願う歯科医師達の苦肉の方向性のように思えてなりません。必要な原価は決まっているので、自由診療の過当な価格競争は、衛生面での歯科医療の質を下げる要因になる可能性を高めてしまい、「適切な歯科医療提供」という本質を失わないか心配です。
審美歯科治療はオリジナルという訳ではなく、製品の使用方法を適切にどこまで工程を省略せずに行うかということが一番重要ですが、診療時間には限りがあるため、細かくひとつひとつ正確な操作は非常に困難です。そういう意味でいうと、熟練することで熟練していない人との間で差が出るといえばそうかもしれません。
さて、サンドブラスターの使用も省略されやすい工程のひとつですが、オールセラミックに限らず接着操作の使用説明書ではよく登場しますが、実際の臨床ではなかなかサンドブラストをするところまで時間の余裕がないことも多いものです。
サンドブラスターは、接着面の表面を粗造化するのに用いますが、50μ以下のアルミナが主に使用されます。
モリムラのマイクロエッチャーをエアにつないで使用していますが、丸の内デンタルでは、ほぼ仮着(仮の接着剤で歯をとめる)行為をほぼしなくなったので、より出番は減ってしまいました。
オールセラミックのイーマックスやジルコニアは、従来のメタルボンドセラミックと比べ、強度が4~10倍硬いので、ポーセレンの破折の可能性が低いことと、しっかり調整しきってしまう時間を確保していること、8倍のルーペで咬合チェックするせいもあって誤差が昔の肉眼や3倍ルーペの時代と比べるとよくなったせいもあるでしょう。技工士も選び抜いているので出来上がり自体の精度が高くなっていることもあげられます。
オールセラミックの仮着はデメリットもあります。適合が良すぎると外れにくく仮着を外すときに、ヒビが入ったり、薄い部分が欠けたりすることがあるためです。仮着はオールセラミックの薄い部分には不向きで、接着していれば大丈夫でも、仮着の場合にはくっついていないことが多いので欠けやすくなります。
欠けるとやり直しになってしまうため、患者さんにも迷惑な事態となります。審美的な色合いや質感が患者さんの気に召さない場合は、とりあえずつけてみましょうなど言わず、即座に技工所に送り返し微調整をかけるようにしていますが、仮着し本着する場合より回数や時間は減る傾向に向かうので、アポイントに余裕ができ、患者さんにも、クリニックにも回数が少なくで済むといういい循環となっています。
「時間割引率」とは、今を格好よくみせるために、将来は犠牲にしてもいいという価値観ですが、今を優先するか、将来を優先するかという、忍耐バロメーターのような価値観ですが、一般に、男性は、時間割引率が高いそうです。女性のほうが、今を我慢して、将来を犠牲にしないような生き方ができているということでしょうか。
審美歯科治療では、圧倒的に女性が多い訳ですが、これは、時間割引率にあてはめると、しっかりとした虫歯治療や、それに続く審美歯科治療は、今多少のお金がかかっても、自分の歯を審美性を保ったまま、長持ちさせることができるなら、多少の出費は惜しまないということでしょうか。
男性を当てはめると、審美性より機能性が維持できていればよく、なるべく安価で済ませておき、将来歯が駄目になったら、その時考えればよい。審美歯科治療費は、大量生産品と比べると、非常に高く感じ、洋服や電化製品・車や趣味、たばこやお酒に費やしたほうがいいと考えがちのようです。
しかし、自分の歯は、二度と再生することのできない体の組織の一部なのです。精度の良い審美歯科治療を行い、自分の組織の一部を良質な状態にしておくという意味では、優先順位を上げたり、価値を見出したりすることをお勧めします。
もっとお勧めするのは、虫歯や歯周病を防ぐ予防歯科に関心を持っていただき、なるべく自分の歯を末永くしようするようにする努力をしていただきたいと思います。予防歯科は、将来に健康な歯を残すという、時間割引率の低い、今努力して将来に備えるという価値観そのものだからです。
審美歯科治療は、オールセラミックで被せれば、簡単に解決すると思いがちですが、複雑な要素を持った患者さんの方が多いのが現実です。単純に、「これはできないだろうとか、期間がかかりすぎるからあきらめようとか、お金がかかりすぎるからここだけでいいやとか」歯科医師に相談する前に判断されているかたも多くみられます。
確かに、お家を建てる時に、豪華にしようとか、大きな家をとか、凝ったつくりにすると大金がかかりますし、車に例えても、軽自動車から高級外車までニーズはさまざまであることは否めません。
しかし、歯は身体の一部であり、考えようによっては、歯1本につき100万円くらいの価値は当然ある訳ですから、それを代用したり、良くしたりしよとする場合の価値は車以上かもしれません。
日本人は、歯医者を治療に行くところとの位置づけですが、先進国では、治療費は高額だから予防に行くところとなっているとよく言われますが、自分の歯を大切にするという意味では、日本のように歯科治療費が異常に安価というのも考え物のようにも思います。歯もダメになったら治せばいいさ。日本の歯医者はポケットマネーで支払える料金だからとなると、自分の歯を大切にするモチベーションは高まりにくいのが現実のようです。
さて、審美歯科の要素としてあげられるのは、①歯並びが一番の問題でしょう。次に②歯周病で歯周病により歯肉が下がると審美的な歯をつくるハードルが上がります。後は、すでに歯科治療で③さまざまな補綴物が入ってしまっていることも問題です。④天然歯のもともとのかたちの問題。
① 歯並びが悪いといくらオールセラミックで綺麗にしようと思っても、位置の問題で、きれいなスマイルラインが作れないことが多くみられます。歯の位置や方向を治さないといけないのですが、それには矯正が必要なケースが多く費用と時間が問題となります。
② 歯周病が残ったままだと、せっかくきれいにオールセラミックが入っても、歯肉が下がり歯の根元の色が見えるようになったり、歯と歯の間の歯肉が下がりブラックトライアングルが出てしまったりします。
③ 健康保険の歯の銀歯やプラスチックの歯に金属が中に入ったセラミックのメタルボンドが入っていたり、ハイブリッドセラミックインレーが入っていたり、オールセラミックやジルコニアが入っていたりと強度や審美性の高さがまちまちのものが入っていると、咬みあわせの調整の仕方や色の合わせ方に統一性を持たせることが難しくなってしまいます。
④ 天然歯の形状は実はさまざまで個性があります。モデルの人のきれいな歯並びをみても、美しさはさまざまなのです。どこにゴールを設定するのか、髪型などもそうですが、その人にはなれないタイプの髪型であったり、歯の形状であったりするのです。
機能優先という言葉は、日本の歯科医療界では当然の行為の中にあります。健康保険での治療は、機能優先を実践してきたからです。
たまにテレビに映る素人の方が笑うと銀歯がよく映ります。テレビの性能が上がり大画面でよく見えてしまうという欠点と、一般の人がテレビに映る頻度が上がったせいかもしれません。
しかし、写真もフィルムからデジタルに移行し、iPhoneなどでも簡単に高画質の写真が撮れるようになると、自分の写真写りを知ってしまいます。
知ることは問題で、気になってしまうということです。気になり始めると、銀歯が見えないような笑い方となったり、歯が出っ歯だったりすると、歯並びが気になって仕方なくなったり、
黒く見えるところがあったり、歯肉が黒かったり、差し歯の色が合っていなかったり、歯肉がさがったりと、意識することで、改善したいとの気持ちが湧いてきます。
しかし、日本の健康保険医療は、「機能優先」。歯科医師の才能も、機能回復に注がれてしまってきました。
時代は、自然な美しさであったり、理想の口元や歯並びや歯の白さを追求されています。そのニーズに応えるには、審美歯科という概念が重要になってきますが、機能回復とは違った
治療体系が求められますが、多岐に渡るものでもあります。
それは、
歯の詰め物を単純に詰めるだけでなく、色や形状を高度に合わせること
ホワイトニングの知識と技術が必要なこと
矯正の知識と技術が必要なこと
セラミックの知識と技術が必要なこと
ルーペなどの肉眼によらない精度の高い治療体系を取得すること
腕のいい技工士を探し当て、正確な指示が出せる知識とチームワーク
患者さん「お客さま」の希望を汲み取る話術を取得すること
お客さまの希望と治療の限界を的確に判断し、満足のいくゴールを設定できること
機能を損なわず、歯周病や虫歯治療・根管治療の精度内容を把握し、後からやり直しにならない精度レベルで、期間をなるべく短縮すること
など、一般歯科の内容がしっかりとできる上で審美歯科に取り組めるかどうかが、総合審美歯科治療が完結できるかにかかってきます。
ホワイトニング専門のみとか、矯正歯科のみとか、一般歯科中心でたまに審美歯科治療だとなかなか審美歯科治療のレベルを上げることは難しいのです。
一般歯科中心だと、審美歯科セラミックを担当する歯科技工士との細かな色彩連携が難しくなってしまうからです。
オールセラミック治療は、金属中心の治療と比べ繊細なので、ルーテインワークでいうと診察の流れがだいぶ違ってしまうためです。
これから先ずっと日本で求められるのは、肩ひじ張った審美歯科というよりは当たり前の歯科治療としての審美歯科といえるでしょう。
歯科医師にとって、日頃の前向きな治療の積み重ねにより、らせん階段をひとつずつ上がっていくように、スパイラル的にそれぞれの先生の歯科治療技術は進化していくように思います。
日本の歯科医療技術が世界に誇れるようになるには、銀歯から脱却することと、治療中心から予防歯科にシフトすることが求められていると思ってなりません。
「慣れ」とは恐ろしいものです。みんなに銀歯が入っていると、自分もそれでいいと感じてしまいます。
自分の周りの歯医者さんが健康保険治療で当たり前のものとして提供してくれるのが銀歯なのですから、銀歯は国民的に受け入れられる歯科治療だといえるでしょう。
健康保険には、矯正歯科治療はありませんし、インプラント治療もありません。
しかし、歯並びが悪いと矯正歯科を受けたくなりますし、歯を失うと入れ歯やブリッジになりますが、インプラント治療のほうが第一選択肢であるべきなのは確かです。
歯科医療技術は確実に進化してきているのに、健康保険では受けることができない治療が結構あるという現実があります。
日本人の歯科への関心は、西欧諸国と比べると低いと言われていますが、それは、健康保険での安価な歯科治療費が駄目になったら、換えればいいさという気持ちがそうさせているように思います。
しかし、それで本当にいいのでしょうか?
自分の歯を大切にして、自分の歯を末永く使うことは、非常に重要なことであるということが、最近の研究からわかっていています。
それは、しっかり咬むということが、脳への血流を良くするということ、粘膜から細菌が血液中に入りこみ全身にまわるということ。
この2つは、なーんだと思われるのと、虫歯と関係ないし、歯医者に行ってもしょうがないし、どこの歯医者に行っても同じじゃない?と思われる要素です。
審美歯科とは関係ないじゃんと思われるかもしれませんが、本来自然な要素として大切にしなくてはいけないものとしては、共通点があり、歯科で解決するものであることは同じです。
健康寿命の中で本来の歯やお口周りの美しさを保つことは、重要な要素なのですが、理解しにくい要素でもあります。
現代歯科治療では、このような概念が高次元に複合的に治療できる歯科医院が必要で、それに応えることが現代歯科のニーズに応えるということでもあります。
私たちは、現代社会が求める情報の提供を地道に行い続け、リードすることで、社会がそれについてきてくれることを望むしかありません。
健康保険のルールに乗っかるだけでは、農協と農家の関係に近い感じがしてしまいます。
元気な農家さんも、自己努力と研鑽により道を切り開いている姿には共感します。
旧態前の仕組みを変えていくのは非常に大変ですし、時間もかかります。
私たちの時代になんとか、日本の歯科の意識の水準が西欧諸国レベルまで上がり、先進国の仲間入りできるといいですね。
歯の審美的内容・治療費・治療期間などについて、ご不明点などございましたら、
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