審美歯科治療で行う天然歯に近づけるための前歯治療についてお話します。まとめて数本治療する場合、天然歯に合わせる訳ではないので、色調整がしやすく治療しやすいですが、1歯とか、2歯の場合、前歯のセラミック治療をしたのに、「どうも色が気になるとか、質感が自分の歯とどうも違う」といったことは、よくあります。それは、歯科医師として治療を行う側からみても、既製品ではなく、ひとつひとつが微妙に違う芸術作品であると考えた場合、うまくいく時とそうでない時があると感じるくらいですから、悩ましい治療でもあります。天然歯と同じものをつくることはやはり不可能で、どこまで近づくかという治療でもあるのです。
しかし、オールセラミックの素材や接着剤の進化や歯の土台(ベース)に対する考え方の変化により、変わろうとしています。
ラミネートべニアは硝石系のセラミックでつくりますが、このガラス状の素材は、ずいぶん前から使用されており、素材としての審美性は昔も今も、ベストな素材であると言えます。しかし、強度が不足しているので、この硝石系セラミック単体でセラミックの歯を作ることはできず補強が必要となります。ラミネートべニアは単体ですが、他はベースとなるものに焼き付けてつくります。
従来の概念では、歯の土台(ベース)の色が外に透けないようにカバーし、そこから切り離して、セラミストの技量によりより自然な色合いを追及してきました。歯先(切端)はカバーされていないので、セラミックだけの部分もありますが、ベースに近い部分に関しては、歯科医師の入る余地として、セラミックの色をしっかり出せるよう厚みをとり(歯の削る量が増える)、写真を撮ったり、仮歯(プロビジョナル)の情報を多く提供するなどするしかありませんでした。最終的に出来上がった歯より、金属が入っていない仮歯(プロビジョナル)の方が見た目が良かったという患者さんもいたりします。
しかし、ここで何が変わろうとしているのか?それは、「透かす」ということにあります。
オールセラミックはメタルボンドのように下地に金属が介入していません。それでは、オールセラミックであれば皆同じように透けるのか?といわれればNoです。ジルコニアは進化してきていますが、透明性はまだまだ低く透けません。e.maxはどうでしょうか?ジルコニアの一番透けるものより透けます。ただ、e.maxには同じ色でも、透けやすいものと透けにくいもの・透けないものの3種類が用意されているのです。
一般的に、e.maxの被せ物は、透けにくいタイプを使用して歯科技工士は、オールセラミックの歯をつくります。実際にはこのe.maxでつくった歯は残念ながら今のものはやや暗い色調になってしまっています。
ここで、透けやすいタイプのe.maxを使用し、土台の歯も象牙質の色調に調整を行い、土台の色を透かし、接着剤の色のバリエーション(接着剤の色が非常に増えたことによりつくり込むことで、理論的には、より審美性を高めることが可能となります。土台の作成は従来は金属でしたが、最近ではほぼファイバーコア(強化繊維とレジンでつくった土台)に移行してきています。このほか、神経を取った歯の場合、ウォーキングブリーチ(歯の内面からのホワイトニング)を行い土台の色を天然歯に近づける操作を行います。神経がある歯の場合は土台の色が変色している訳ではないので、そのまま、透けるタイプのe.maxの使用が可能となります。ラミネートべニアは歯のエナメル質に接着することが前提ですが、それ以上削ってある歯の場合は、透けるタイプのe.maxに硝石系ポーセレン盛りを行うことが審美性が一番高くなるといえるでしょう。
また、e.maxは極端な話ガラスなので、硝石系ポーセレンというガラスとガラスでは、ジルコニアよりしっかりとくっ付いてくれます(以前よりだいぶくっ付くようになりましたが)。この特徴を生かすと、e.maxの表面は硝石系の一番審美性の高いセラミックで作ることが可能になります。
しかし、e.maxは、ガラスを溶かして作るような工程なので、単調な色合いになります。ここから自然に見えるように質感を整えたり、色を付けていきます。臼歯部などは、細かい審美性を要求されないので、問題ないですが、前歯では、透ける以外に、質感や色合いの調整も重要な要素になります。e.maxは研磨するとツルツル、ピカピカになりすぎてしまい、自分の歯より艶が出すぎる傾向があります。色を付ける操作も熟練が要求される要素となり、光源により見え方が異なるため、クリニックでの光源と技工所での光源を合わせて患者さんと歯科医師・技工士が同じ条件で色確認を行い、細部までつくり込んでいくことが要求されます。
ジルコニアの場合は、ジルコニア単体での審美歯科としての前歯治療は不向きです。歯の土台にシェル状のジルコニアカバーをつけ、その上に硝石系ポーセレン(セラミック)を盛り、歯をつくっていきますが、従来型のメタルボンドと違い、金属色ではないので、土台の色を調整した場合、透過性はe.maxより劣りますが、同じように透かすことができます。
硝石系ポーセレンの扱いは、慣れた技工士(セラミスト)も多いので、十分審美的な前歯をつくることが可能となりますが、ジルコニアにも透けやすいタイプと全く透けないタイプがあるため、歯科医師側が技工士に指示を出さない場合は、透けないものを選択されてしまいます。3M社Lavaではシェル状のフレームは7色ありその中から、しっかり歯質に近い色を選択して硝石系ポーセレンを盛っていくことで、審美性を上げることができます。
透けるをテーマにした場合、接着剤の選択は重要な要素となってしまいます。ラミネートべニアの場合は、バリオリンクべニアという接着性審美レジンセメントの場合、7色から選択可能で、同色の水溶性ペーストが用意されており、色調のシュミレーションが可能となります。試適用のTry-inのペースト明度と温かみを調節することが可能となります。ちょうど、LED電球の昼光色~電球色の違いのイメージとなります。
イボクラ社のマルチリンクオートミックスでは、こちらも試適が可能な、4段階のTry-inのペーストがあり色調をシュミレーションすることが可能となっています。今までの、基準色だけの一発勝負から、患者さんに色の好みを確認する工程が可能となることで、満足度の高い審美的な前歯治療が可能となります。
ひとつひとつはささいなことではあります。しかし、最大限の審美性を必要とされる前歯治療では、「透かす」ためにより多くの手間をかけることにより、より審美性の高い歯をつくりだすことができるので重要な要素であると考えています。
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