私は、もともと一般歯科を中心とした開業医であり、「審美歯科で開業するぞ」という気持だった訳ではありませんでした。
国立長崎大学卒後はまず一般歯科治療をオールラウンドにできるようになるようにするための修行に3年(健康保険治療6:自費治療4)、その後六本木で副院長後、墨田区錦糸町にて駅前再開発の時に開業。
数名のドクターを雇用しつつ、歯周病の手術やインプラント手術のトレーニングを積み、外科手術が日常の治療となりました。同時に補綴専門医に精密に歯をつくるイロハを学び、診療のさらなる自費化へ。(健康保険2:自費治療8)。ほぼ紹介患者さんのみの診療に移行。矯正専門医に矯正を学び、部分矯正から全顎矯正まで対応できるようなりました。
インプラント学会の認定医試験を受けインプラント学会認定医となり、インプラント手術にまい進し、年間100本ペースを確立。その後、丸の内と豊洲地区にも歯科医院を開設。インプラントの術後の予後コントロールの重要性からどうすれば、なるべくインプラント治療にならずに済むのかという観点から、予防歯科の分野を歯科衛生士と共にまい進しました。
どれも審美歯科とは結びつかない要素ばかりで、どうして審美歯科なのかと思ってしまいますが、審美歯科はこれらの治療の集大成であるといえるからです。
さまざまな治療経験は審美歯科治療に生かされます。それは、どの治療も目的のひとつに美しい口腔内組織の回復にあるからです。従来型セラミックの治療でも、「いかに自然に見えるか」であったり、自然な白さの追求であったりするからです。
審美歯科治療とは、美容外科のイメージが強くありました。前歯を1日で削り、次の予約時に全部セットする治療というイメージです。歯をざっくり削り、数回で多額の費用をいただく治療というイメージであまりいいイメージではありませんでした。なるべく歯を残すべきで、天然の歯ほど綺麗なものはないだろうと思い込んでいたからでしょうか。
昔は、歯科治療では、金合金の使用がベストといわれていたことや、セラミックは、欠けやすく、奥歯の審美治療は、見えないから金属でいいですね。と言わざるを得ない要素が多かったからでしょうか。現代社会では、歯ぎしり率も高く、せっかく審美的な補綴物を作成しても、壊れると元も子もない訳ですから。
e.maxやジルコニアの登場により、咬合力に耐えられる審美素材の登場により、技術が変わったというより、審美歯科治療がようやく安心して行える環境が整ったからといえるでしょう。
審美歯科ではどうしても歯科医師だけでは解決する訳ではなく、歯科材料や歯科技工士によるところが大きいといえるためでもあります。
ダイヤモンドは宝石職人のカットや研磨によるところとダイヤの原石によるところでほぼ決まってしまうでしょう。審美歯科では、お口の中に宝石を入れるようなもので、歯の健康を取り戻す要素としては、表面の見える部分にあたるので、一番気になるところでしょう。
表面の硬さや質感が良質なものになったとすると、次は、継ぎ目です。
継目は気がつけば審美歯科2で。
セラミック表面の硬さや質感の次は、継ぎ目です。金属では目立ちにくいのですが、白いセラミックだと継目が着色していくと目立ってきてしまいます。治療直後ではほぼわからない要素ですが、処置精度の差がここから出てきます。
①接着精度
②適合精度
③表面清掃性精度
④表面処理精度
⑤う蝕感受性(虫歯になりやすさ)
あとは患者さんの⑥生活習慣によります。
①の接着精度では材料の進化もありますが、適した接着剤選びが重要です。湿度に強いもの、光照射が必要なもの、自然と固まるもの、接着剤の色のバリエーション、瞬時に固まるもの、5~6分かかるもの、
かたまりかたが硬いもの、柔らかいものなどがあります。
②適合精度を向上させるには、歯を削る精度、型を取る精度を上げる必要がありますが、これは、精密歯科治療の神髄の部分なので、審美歯科を目的というよりは、自費治療の処置精度の問題であるともいえます。歯を削るだけでなく、歯肉との際の部分の処置精度も問題になります。圧排糸や個歯トレー、シリコン印象、操作時間、バーの種類、削る回転速度など、熟練により生み出される要素が、適合精度にはあります。
③表面清掃性精度は、デンタルプラークが残った状態で印象を取ると当然隙間になりますし、仮封後の補綴物を合着する時に、仮封中はデンタルプラークが残りやすく、プラーク上から接着しても、接着は当然甘くなってしまい、数年後の継ぎ目の着色の原因の大きな要素となり得ます。
④表面処理精度は、エッチング処理やプライマー処理のことですが、エッチングやプライマーの製品選びは重要です。この分野の進化は目覚ましく、この材料と手順の正確な把握が接着剤の合着力をフルに引き出すことができます。
⑤⑥う蝕感受性(虫歯になりやすさ)に関して、歯科治療で詰め物や補綴物が必要になる場合の大半が、虫歯になったためであり、そこの場所は、治療した後もリスクは変化する訳ではありません。心を入れ替えてブラッシングの習慣を変えたり、定期的に歯科医院へ行き、衛生士にクリーニングをしてもらうなど、変化が必要です。除菌や予防歯科的操作をおこなうことも意味があります。継目の着色は、新たな虫歯のサインであり接着部が細菌(プラーク)や酸蝕症などにより酸性に傾き溶けだしているからです。
継目の着色を減らすことは、重要な要素であることは間違いなく、さまざまな要素を一つ一つ歯科医師と衛生士と貴方でつぶして行くことが重要です。
審美歯科治療では、お口の写真を頻繁に撮ることは当たり前のことですが、それが簡単になったのは、ごく最近のことです。以前は、デジカメがなかったからです。フィルムを現像し、スライドにした後、技工士に送る必要がありました。丸の内デンタルオフィスでは、ニコンのメディカルニッコールというレンズを15年以上愛用していますが、これは、アナログのフィルム用のレンズですが、デジタル用ではニコンは製造しておらず、3台のメディカルニッコールレンズを愛用し続けています。リングフラッシュでマクロが撮れる医療用というニーズは世間一般的には需要がないのでしょう。これが壊れて駄目になってしまったらどうしましょう。
歯の色や状態の情報を歯科技工士と共有が必要なことは当たり前のことですが、毎回フィルムを買い、カメラ屋に現像に出し、取りに行き、技工士に送るという操作は手間がひとつ増えることとなり、面倒でしたが、補綴の師匠は非常にうるさく写真を要求していたので、デジタル化する前からずいぶんお口の写真を取り続けてきました。デジタル化されると、撮ったその場でメディアを確認し技工士に送るだけで完了です。最初は画素数も少なかったですが、どんどん画素が増え写真も鮮明に写せるようになりました。
若い先生では、最初からデジタルが使えたでしょうが、昔からお口の写真を撮っていた者としては、デジタル一眼レフは画期的でした。
審美歯科治療は、①ホワイトニングなどを組み合わせより白くする方向性と②金属や従来型セラミックをやり直しより自然な歯を取り戻す方向かの2つが基本的な要求のように思います。
①の場合は理想的な審美歯科の追及を意味し、従来の自分の状態から、理想と思われる状態を作り出す治療行為となります。
②の場合は、従来型歯科治療の延長線上の治療となり、一般歯科での治療の精度を上げることで可能となる治療行為となります。精度を上げることが重要ですが、自分の歯に限りなく近づけるという治療は、非常に難しい治療となり、どこで妥協するかとの鬩ぎ合いとなります。セラミック単体(硝石系)が透明度が高く一番美しい訳ですが、自分の歯よりセラミックの透明度が高いということもしばしばです。質感も技工士によるしっかりと研磨した場合に、自分の歯より艶があるということも出てきます。質感に関しては、写真は重要で今のデジタル写真では拡大もでき細部までチェックすることが可能となっています。
しかし、写真はしょせん写真で実物とは違っています。実物との摺合せが審美歯科治療で補綴物を製作する場合、歯科医師の大事な役割であると言えるでしょう。
歯は、年齢と共に長時間使用されますが、再生される訳ではなく、年々咬み合わさる部分は削れていきます。エナメル質も減っていくのです。削れて減っていく際に、エナメル質表面に亀裂が入ることもしばしばです。亀裂が入った部分は着色もしやすく、自然な使用でいうと、歯の色は着色傾向が出てくるのはしかたのないことかもしれません。
しかし、逆に考えると、ホワイトニングなどにより、自然な状態より白さを改善できれば、年齢以上に若く見える可能性が出てくるともいえます。
歯が白いと相対的に若く見える、健康的に見えるというイメージはあながち間違ってはいないでしょう。
異常な白さは別として、健康的な白さは維持することは現代社会では重要な要素となってきています。
対人的に人の心理に影響していると考えると、仕事や日常生活においても好感度が上がる可能性も高くなるといえるのではないでしょうか?
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